【デジタル大好き税理士・戸村涼子presentsペーパーレスから始めよう】AI時代に「良い文章」を書く3つのコツ

「読み書き」はビジネスパーソンに必須のスキルですが、読むことはできても、書くことは苦手、という方も多いのではないでしょうか。学生時代、書くことといえば読書感想文、大学の卒論くらいだったという人も多いでしょう。そんな中、2021年から広がったAIの登場によって、文章との関わり方が複雑になりました。誤字脱字のない正確な文章を書くのであればAIに勝るものはありません。そんな時代に、「人間が文章を書くことの意味」が問われています。

そこで、本記事ではAI時代に「良い文章」を書く3つのコツを考えました。「良い文章」とは、ここでは「書いた人が見える文章」とします。誰が書いても同じ文章の反対、と考えていただければOKです。

書く習慣を作る

筆者は、これまで書籍を10冊出版し、ブログやホームページ、そしてこのコラムで日々文章を書いています。この話をすると、「どこで書く勉強をしたのですか」と言われるのですが特別な勉強は何もしていません。

強いて言うならば、「書く習慣(仕組み)を作る」ということをしてきました。現在私は複数のプラットフォーム(こちらのコラムの他、ホームページ、ブログ、note等)で定期的に発信しており、かつ平日毎日メールマガジンを読者に届けています。また、自分が見るための英語日記もつけており、毎日何かしら文章を書いています。元々は「営業の手段」として文章を書いていたのですが、徐々にライフワークとなり、書かないと気持ちが悪いくらいになってきました。これが習慣化だと思っています。ありがたいことに、読者の方から「わかりやすい」「伝わりやすい」と言っていただけることが多いです。

拍子抜けする話ですが、良い文章を書きたかったら、文章を書くこと以外に方法はないと思っています。もちろん、良い表現だとか、伝わる文章に必須の要素だとか、細かい論点はありますが、そのようなポイントを絞った解説本は今や本屋さんにたくさん置いてあります。必要に応じて読めばよいでしょう。筆者も、何冊か読んで参考にしました。とはいえ、人によって何に重点を置くかは異なりますので、技術を研究するよりもまずは「量」をこなすことが大切です。

なお、後述しますが私は文章作成にAIを使いません。AI時代に文章を効率的に作れることは間違いありませんが、書く人となりが伝わる良い文章は、AIには書けないと考えているからです。

良質なインプット(体験)をする

伝わる文章を書くためには何が必要でしょうか。私は、その人が実際に経験した、良質なインプット(体験)と考えています。

例えば、AIの進化が進む昨今に関連して、「今すぐ始められる!AIに苦手意識のある人が今すぐできること」という記事を書くとしましょう。ChatGPTに聞くと以下の項目を提案してくれました。

  • 「まずは聞いてみる」—— AIを"相談相手"として使ってみよう
  • 「小さな作業から」—— メール文やアイデア出しをAIに任せてみる
  • 「学ぶより慣れる」—— 毎日5分、AIと触れる時間を作る

最もらしい回答です。AIに詳しくない人でも、AIを使えばこういった記事はいくらでも書けてしまいます。でもこの内容で読んだ人が「やってみよう!」と思えるでしょうか。

文章には、見えない「エネルギー」があります。それは、その人オリジナルの体験であり、AIではどうやっても書けない内容です。

私の場合上記のテーマで記事を書いてくださいと頼まれたら自分のこれまでの体験を必ず入れます。今でこそ私はデジタルやAIで講演に呼ばれることが多いのですが、始めたきっかけはすべて「好奇心」「必要に迫られて」のどちらかです。

ChatGPTが出始めたときにすぐに触ったのは、いろんなことを聞いてみたかったからです。「これから税理士の仕事はなくなると思いますか?」など、好奇心あふれる質問をして楽しみました。

必要に迫られた経験もあります。いつも使っていたチャットツールが有料になり、プログラミングをしてなんとか履歴を残さなければいけなくなりました。できなければ、相当なコストがかかる状況でした。そんなとき、ChatGPTのコード生成機能を活用してなんとか乗り越えました。ホッとしたと同時に、なんとも言えない高揚感を得られた体験でした。

こういったエピソードは私のオリジナルです。このような、その人にしか語れない良質なインプット(体験)があると、文章はぐっと伝わりやすくなり、かつ魅力的になると思っています。

良質なインプットでいうと、「読書」も外せません。私も、日々読書から得られた知見を自分の文章に活かしています。昨今、SNSによる短文投稿や、動画が広がっていますが、深い思考を巡らせるためには私は読書は必須だと思っています。短文や動画は、思考をさせてくれる余地を残してくれませんが、読書は立ち止まって考えることができるからです。

インプットの読書として、私がおすすめしたいのはいろんなジャンルの本を読むということです。私は職業柄、他の税理士の方が書いた本を読みますが、どちらかというとそれは研究のためで、それ以外はジャンルを問わず多読する傾向が強いです。仕事とは関係ない純文学、歴史、哲学、エッセイなどあらゆる本を読みます。そのほうが、あらゆる視点から自分を批評的に捉えることができるからです。自分がしている仕事に関する本を読むことも大事ですが、全く関係ないジャンルの本を横断的に読むことで、結果的に他人やAIと差別化できる良質なインプットにつながる可能性が高いです。

「文章作成」にAIを使わない

先ほども少し触れましたが、私は文章作成にAIを使いません。(唯一使うとしたら、テンプレートで送られてきた営業メールの返信文の生成くらいでしょうか)世の中には「AIでいくらでも文章を生成できる」ことが強調されますので意外に思われるかもしれません。なぜ文章作成にAIを使わないのかというと、端的に、AIでは良い文章(書いた人が見える文章)が書けないと思っているからです。

それでは、文章の大枠となる「構成」を考えてもらうのはどうでしょうか。実は、ここも積極的に活用はしていません。なぜかというと、構成は文章を書くうえで土台となる部分であり、そこをAIに考えてもらってしまったら、全体のオリジナル性が失われるからです。もちろん、参考にするくらいであればしていますが、提案されてきたものをそのまま使うのは避けています。

ここは、「議事録作成」「文章の要約」などと異なる部分です。これらは、目的がはっきりしていますので、誰が作っても同じです。つまり、AIの活用が非常に期待される場面です。

この他にも、「誤字脱字の訂正」などもAIの活用を非常に期待できる場面です。筆者は、AIが登場する前はすべて自分でチェックしてから編集者さんに提出していました。今は、生成AIに一度校正をかけてから提出するようにしています。これはわかりやすい「人間がしなくていいこと」ですので、生成AIを大いに活用するべきです。もちろん、自分が書いたオリジナルの文章は維持します。生成AIに直してもらうようなことはしません。

多くの人が「良い文章を書きたい」と言っているとき思い浮かべているのは、議事録や要約のような文章ではないはずです。文章の主体性は自分が握りましょう。まずは自分で構成してみて、サポート役としてAIを使う姿勢が大事です。

文章には、書く人の人格や個性が色濃く出ます。ビジネス目的で書く文章であれば長文は嫌われますが、必ずしも長文が「良くない文章」であるとは限りません。長文でも、読みづらくても、魅力的な文章を書く方はたくさんいます。つまり、文章には正解がないことが面白いのです。その正解のなさを生成AIによってクリーンな状態にして正解に持っていくことは、進んで世の中の大量の文章に埋もれることにほかなりません。

文章を書くには抵抗がある」人の一歩として、ネットで公開する短めのブログはおすすめです。今は、自分でサーバーを契約しなくても文章を自由に投稿できるプラットフォームはたくさんあります。自分だけが読む日記も良いですが、他人の目があったほうが緊張感やモチベーション維持に役立ちます。しばらく続けると、自分の文章の「個性」に気づくはずです。

関連するタグ
ペーパーレスから始めよう
関連するワード

AI,ライティング,文章