ペーパーレス化の目的とは?導入成功を目指す流れを解説

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【この記事の内容】

近年は労働時間のあり方や業務の効率化に注目が集まっています。労働人口の低下や核家族、共働きによりワークライフバランスの重要性が高まったことが要因として挙げられます。

業務効率化には多くの選択肢がありますが、聞き馴染みがあるものに「ペーパーレス」があります。プレゼン資料やカタログ、契約書などをオンラインで扱えるため、働き方の多様性を鑑みるとぜひ導入したい選択肢です。

今回は企業単位でペーパーレス化を推進する際に知っておきたい「ペーパーレス化の目的」を時代背景と従業員の働き方双方から解説します。

【今さら聞けない】ペーパーレス化が進む理由

ここではまず、ペーパーレスが多方面で進められている理由を3つ紹介します。パソコンの普及、スキャナの広がりなどから時代の中で何度かペーパーレスがブームになることがありましたが、今回の取り組みは官民挙げての推進が見られます。推進される背景を把握してうまく導入を進めましょう。

国をあげたDXの推進

近年、経済産業省や総務省をはじめとしたさまざまな方面で国主体のペーパーレス化が加速しています。身近な例としてはマイナンバーを始めとしたデジタル行政サービスの提供が挙げられるでしょう。他にもマイナポータルやe-Taxを活用して年金の確認や確定申告もオンラインで行えるようになり、私たちの生活にペーパーレス化が浸透し始めています。

このように国がペーパーレス化をはじめとしたDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しているため、民間企業も一緒に進めていかなければ今後、経営に支障をきたす可能性があります。たとえば、IT導入補助金を受け取れずビジネスチャンスを逃したり、ペーパーレス化で業務効率アップした企業との競争に敗れたりなどが考えられます。

企業が成長し続けるために、ペーパーレス化をはじめとしたデジタル技術の導入は必要性を増しています。

働き方改革の推進

2018年度に「働き方改革関連法」が交付されて以降、従業員の働き方改善に取り組む企業が増えています。労働時間や働く場所の見直し、働き方の多様性を加味した制度づくりなど、ハンディキャップを抱える方も働きやすい企業づくりが求められています。多様な働き方を支える取り組みの一環として、ペーパーレス化やそれに付随するリモートワーク、フレックスタイム制度が挙げられます。

ペーパーレス化で場所の制限が無くなることから「働きやすい職場づくり」の目的を果たします。

VUCA時代への対応

VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の略称で、変化に富み、先の予測が困難な時世をあらわす用語です。技術の進歩や未曾有の災害、不穏な世界情勢など、激しい現代だからこそ迅速な意思決定が企業成長を助けます。

迅速な意思決定には関連資料の共有から決裁までの時間を短縮する必要がありますが、そのシーンにおいてペーパーレス化は重要な役割を担います。

環境への配慮

ペーパーレス化は世界全体の課題である環境保全の取り組みにも寄与します。ペーパーレス化を推進すると、印刷代や紙の処分などが減るため古紙利用よりも環境に配慮可能です。

持続可能な世界を目指し定められた「SDGs17」では、2030年までに目標達成を掲げていることから、各企業がペーパーレス化を取り入れることで地球環境への配慮も叶います。

企業がペーパーレス化を推進する目的

ここからは企業がどのような目的を持ってペーパーレス化を進めればいいかを解説します。いくら国や環境に適合できる取り組みであっても、自社にメリットがなければ導入をためらいます。ペーパーレス化で自社に起こるポジティブな変化を把握しましょう。

情報や資料に統一性を持たせる

ペーパーレス化においては、オンラインで各種資料を保管するため、フォルダに命名規則を設けます。たとえば、プレゼン資料の場合、各データを「〇〇株式会社_●月●日打ち合わせ」など規則性を持たせておくと資料を探す手間が省け、かつ共有が容易です

契約書や請求書においても電子化により同一フォルダに一定期間分を格納すると、顧客とのやり取りを一元管理できるため、納品後の検証や経理処理の際に効率化できます。

作業フローの効率化

ペーパーレス化は従業員の作業フローを改善し、業務効率向上の目的を果たします。紙の書類の場合、原紙を印刷し、必要事項を記入した後に捺印し封筒に入れ、郵便局に持っていくなど多くのフローが発生します。この作業をペーパーレス化しオンラインで行う場合はデジタルデバイスで書類テンプレートに必要事項を記入し、対象者にメールやチャットで送付するだけのため作業を簡略化できます。

使い方によっては技術の伝承も可能に

ペーパーレスは目先のだけで目標としてだけでなく、先を見越したメリットもあります。マニュアルや作業フローを動画や写真で可視化することで、これまで難しかった技術の伝承が可能になります。

たとえば、製造業において熟練の技が必要な作業を動画で撮影し、ポイントを音声で取り入れると細かなニュアンスが伝わりやすくなります。労働人口の低下に伴い技術の伝承も課題となっていますが、ペーパーレス化はその課題も解決可能です。

取り組みが自社PRにも寄与する

自社のペーパーレス化の取り組みを公式サイトに掲載し、取り組みの結果を随時更新していくことでPR活動にもつながります。特にペーパーレスのイメージがない業界や業種が取り組むと、他社との差別化を図れるでしょう。

ペーパーレス化とあわせて知りたい法律を確認

ここからはペーパーレス化とあわせて確認したい法律について解説します。いずれもペーパーレス化を業務に落とし込む際の遵守が欠かせません。

e-文書法

e-文書法(電子文書法)は2004年制定、翌年施行の法律で、全官公庁に置ける電子データの保存を認める法律です。なお、e-文書法の存在意義は下記2つの法律にまたがっています。

  • 民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律
  • 民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律

書類の電子化は官公庁の管轄や業界によりさまざまです。そのため、各シーンにおいて電子化が可能か否かを判別するには多くの法律をなぞる必要がありました。しかし、e-文書法が制定されたことで、あらゆる管轄の電子化を一括して認められ、企業の電子化を後押ししました。

電子帳簿保存法

e-文書法と混同されがちな法律に電子帳簿保存法があります。同法律は2022年に大きな改正が行われたため、ご存じの方もいるでしょう。電子帳簿保存法は、税務関係帳簿の電子データ保存を可能とする法律です。経理業務のデジタル化を促進し、国や自治体はもちろん企業の税務処理がスムーズに進むメリットがあります。

電子帳簿保存法では、電子メールで受け取ったデータの扱いや紙の書類をスキャナ保存する方法、会計ソフトを利用してデータ保存する場合の取り決めが記載されています。経理業務をペーパーレス化する場合や、営業部門が契約書や請求書を扱う場面において把握したい法律です。

いずれも担当者は法律を把握した業務フローの見直しが欠かせない

ペーパーレス化はやみくもに進めるのではなく、法律を遵守して進める必要があります。そのため、作業フローの組み直しは法律を守り慎重に行いましょう。作業フローと法律遵守の両観点から網羅するため、現場の担当者だけでなく経営層主体で進める必要があるでしょう。

ペーパーレス化推進時は3つのポイントを守ろう

ここからはペーパーレス化をこれから推進する企業向けに、3つの注意点を紹介します。

経営陣主体の推進

ペーパーレス化は経営陣主体での推進がおすすめです。ペーパーレスの効果を実感するのは主に従業員側ですが、法律に適応した仕組みづくりは経営陣の確認が必須です。また、トップ「なぜペーパーレス化を進めるのか」を明言すると、従業員との齟齬が発生しにくく、士気を高く保ちながらの推進が可能です。

もしも現場からペーパーレスを上長に働きかける場合は「ペーパーレス化は自社にどんなメリットをもたらすか」を意識して訴えると企業全体の課題として取り組んでもらえるでしょう。

適切な機器の選定

ペーパーレス化を決めても、機器(デバイス)が不適切では普及が難しいでしょう。これまでパソコンを使っていなかったにもかかわらず、急に資料や契約書を電子化すると操作方法から習得する必要があるため、かえって業務効率が低下します。

また、外回りがメインの場合、パソコンの前に座る習慣がなければペーパーレス化を推進しても意味がありません。その場合はタブレットを準備したり、操作に慣れているスマホを準備したり、利便性を加味する必要があります。

研修の充実

スマホやタブレットなど、ペーパーレス化を進める機器を従業員が使いやすいものにしたとしても、研修は必ず実施しましょう。普段使っている機器だからと言って、個々が自由に使うのではなくあくまで業務の一環として使う認識を大切にします。利用にあたって遵守したい法律やリテラシーなどの共通認識を持ちましょう。

研修は社内で担当者を立てて進めるほか、ツールを取り扱うベンダーに依頼し実施してもらう方法があります。有償ツールを利用する場合は導入に際して丁寧なサポートを受けられます。

まとめ

ペーパーレス化は国をあげた取り組みのため、各企業も段階的に導入が求められます。しかし、これまで紙媒体をメインで扱っていた企業の場合、進め方を誤ると社内で混乱が生じたり、従業員の不満が蓄積したりする可能性があります。そのため、従業員が使いやすい機器を用意したり研修を充実させたり、無理のないように進めていきましょう。

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