【デジタル大好き税理士・戸村涼子presentsペーパーレスから始めよう】効率化に欠かせないプログラミング

料理だってプログラミング

皆さんは、「プログラミング」と聞くとどんな印象を受けますか?

パソコンの画面に映った何やら難しい文字や記号をものすごいスピードでタイピングしているエンジニアの方を思い浮かべる方も多いと思います。

でも、プログラミングってもっと身近なものです。

例えば、料理。実は、料理ってものすごくプログラミング思考が要求されることなんです。まず、手順が大事ですよね。メニューに時間がかかるもの(煮物とか)と時間がかからないもの(和え物とか)が混ざっている場合、時間がかかるものからとりかからないととても非効率です。野菜を茹でている間、ずーっと鍋の前で待っている方はいないですよね。作り始める前に具体的な手順を頭に思い浮かべているはずです。これこそが、プログラミングです。

プログラミングをコンピュータが理解できるように記述したものがプログラミング言語です。このプログラミング言語には書き方のルールがあります。そのルールが少しでも違っていると動いてくれません。そこが柔軟性のある人間との大きな違いですね。

仕事も、料理と同じでプログラミングが必要です。その業務には何らかの目的(料理で言えば、美味しくいただく、健康になるといったこと)があるはずで、達成するための効率的な手順があるはずです。でも不思議なことに、料理では皆さん工夫して時短を目指しますが仕事では与えられた仕事を教えられたとおりの手順でやることが多いように思います。ここにメスを入れるのが、プログラミングと考えています。プログラミングは、仕事を楽にしてくれる考え方なんです。

バックオフィス部門だからこそプログラミングが使える

「そうはいっても、プログラミングなんて情報システム部門しか関係ないのでは…」と思われる方も多いでしょう。決してそんなことはありません。

むしろバックオフィス部門こそ、プログラミングを味方にすれば劇的に仕事を効率化できると確信しています。なぜなら、バックオフィス部門には大量のデータが集まってくるからです。日々の経理も、人の管理も、給与計算も、集まってきたデータについてどこかに入力するなり、加工するなりしてアウトプットする仕事がメインのはずです。その一連の作業にプログラミングを是非活用してほしいと思います。

実際、筆者はバックオフィス部門にいた頃も、独立した後も仕事にプログラミングを活用しています。

例えば、ExcelVBAはバックオフィス部門の方に是非お勧めしたいプログラミング言語です。私がExcelVBAに触れたのは、初めて勤めた外資系企業の経理部でした。先輩がすごくExcelに詳しかったのです。その方は、大量の銀行の決済データを加工して為替差損益を自動算定し、さらには会計ソフトにインポートするデータを自動作成するExcelVBAを作っていました。手作業でやろうとすると半日から1日かかる仕事を、1時間もかからずに仕上げていたのです。

これは魔法ではないか」と思うくらい衝撃的でした。その頃の私は、せいぜい基本的な関数を使うくらいでしたので。そこから「データの集計業務はExcelVBAで相当効率化できる」ことを知り、その後も業務を短縮させてきました。

思い返すと、その後に勤めた会社や会計事務所でExcelVBAを活用している方はほとんど見かけませんでした。それどころか、関数やピボットテーブルなどその他の便利な機能さえも利用していないところがほとんどでした。Excelは一般的なツールとして認知されていますが、意外なほど「普通に」使いこなしている人はいません。いまさらと思わずにチームでスキルを底上げしていくと劇的に仕事が効率化する可能性があります。

独立後も、プログラミングに接してきました。例えば、RPA(Robotic Process Automation)というツールがあります。これは、厳密にはプログラミングではありませんが、システム間をまたいだルーチン作業(Excelのデータを別システムに転記するなど)を自動化してくれるツールです。どうしても手作業が発生してしまう業務に非常に有効です。コードを1から書かずに部品を組み合わせていく感覚で自動化できるので、プログラミングよりもハードルは低めです。筆者は、毎月Web上で作成する納付情報のデータや、請求書作成などに利用しています。

このRPAも、話題の割には使いこなしている組織や個人の話をあまり聞きません。その理由は、「プログラミングの知識がなくてもできる」などの誇大広告と考えています。確かにコードを1から書かなくても良いのですが、プログラミングの基本的な考え方(変数、条件分岐、配列など)は必要なのです。

また、筆者はGoogle Apps(Googleが提供するGmailやGoogle Drive、Spread Sheetなど)をよく使うので、これらを自動化するGAS(Google Apps Script)と呼ばれるプログラミング言語も頻繁に利用しています。この言語を知っていることで、例えばGmailを一斉に送信できたり、API(Application Programming Interfaceの略。異なるシステム間の一部機能を共有する仕組み)を使ってクラウド上の会計データを効率的にSpread Sheetに連携する仕組みを作って業務を効率化しています。筆者は誰も雇用していないので、RPAやプログラミングがいわば従業員のようなものなのです。

このように、バックオフィスには効率化できる業務がゴロゴロ転がっているはずです。まずは、そのような業務を洗い出してみて、Excelやプログラミング、RPAを駆使してなんとかできないか考えてみることから始めてみてはいかがでしょうか(もちろん、「やらなくて良い」仕事であれば今すぐやめましょう)。

生成AIでプログラミングを効率的に学べる時代になった!

「よし、ではこれからプログラミングの教室に通おう!」と思っている方、その必要はありません。なぜなら、今の時代、「生成AI」という強力な武器があるからです。

生成AIとは、様々なコンテンツ(文章や画像、音声など)を自動で生成してくれるAI(人工知能)のことです。例えば、Open AI社が開発したChatGPTはテキストを主流とした生成AIです。2022年末頃から話題になっているため、触ったことがある方も多いのではないでしょうか。

筆者もChatGPTを日々触っているのですが、一番「これはすごい」と実感しているのが、プログラミングを書いてもらうことです。例えば、Excelで実現したいこと(数値の入力、シートの追加、ファイルの保存など)を記載し、「ExcelVBAで書いて」と指示することで、ほんの数秒でコードを出してくれます。

これまでであれば、変数を定義、具体的な命令を自分で調べて書いて、エラーが出る場合にはネットでググることが必要でした。しかも、ドンピシャで正解が出てくることはまずなくて、試行錯誤が必要でした。この時点で諦めてしまう人も多かったはずです。

一方、ChatGPTに聞けば個別具体的な処理の「正解」を出してくれるのです。もちろん、エラーが出る場合もありますがその場合も表示されたエラーについて「このエラーの原因を教えて」と聞くこともできるのであたりをつけられます。この違いは大きいです。

ですので、ノンエンジニアがプログラミングの「基本」を身につけてある程度のプログラムを書くことは以前よりもずっとハードルが下がっています。そもそも、プログラミングはシステム会社にお願いするより、その業務に精通している当事者が行うのが一番効率的なのです。

生成AIという強力な武器を得た現在、業務を劇的に効率化させてくれるプログラミングを学ばない手はありません。

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