DX化で受けられる補助金と助成金を紹介!

目次
【この記事の内容】

DX推進には人材不足や受け入れ体制の構築など、さまざまな課題点があります。なかでも「コスト不足」を懸念しているところは少なくありません。DXは全社的な取組みのため、企業や実施の規模次第で、莫大な導入コストがかかります。そのため、現実離れした見積もり額に、悩む方もいることでしょう。

当記事では、DXにおいて費用の捻出に悩む方向けに、DXの実施で受けられる公的な補助金・助成金制度をご紹介します。

DX化への取り組みは多くのコストを要する

本格的なDXへの取り組みには、多くのコストを要します。DXにかかる費用は、ツールの導入や採用だけではありません。DXには以下の費用がかかることを認識したうえで予算を組む必要があります。

社内体制の構築費用

DXには新たな部署の立ち上げや専門機関への依頼など、取り組みを始める前に費用が発生します。実施前にかかる具体的な費用は、以下のとおりです。

  • DX推進プロジェクトチームの運用
  • ベンダー組織、コンサルティング利用料(DXの一部を外部に委託する場合)
  • DX人材派遣(DXの一部を外部に委託する場合)

自社の人材だけでDXを完結できるのであれば、上記のうち2つの費用は削減できます。しかし、現状でDXに携われる人材が不足しているなら、新たに人材を募集するための採用コストが必要です。また、従業員にDXのスキルを獲得してもらう場合も育成コストがかかります。

ツール導入費用

DXの実施では、デジタルツールを導入する際の費用が必要です。ハードウェアが必要な類なら本体の購入やリース契約、大規模なDXならサーバー設備の改修・増設もかかります。 

ランニングコストはもちろん、ツールやクラウドサーバーの利用料といった維持コストも欠かせません。内製する場合でも、開発に時間とコストがかかるでしょう。

人材育成費用

既存の従業員をDX人材に育成する場合、研修や教育にリソースをかける必要があります。専門家を招くなら登壇費用がかかりますし、従業員が多いなら会場をレンタルしなければなりません。

また、人材の教育には時間のリソースも割かれます。既存の業務を削って教育を実施するため、間接的な人件費もかかるでしょう。

人材採用費用

自社のITを専門にしたDX人材が不足しているなら、採用活動やエージェントサービスの利用料など、各種人材募集の施策にコストがかかります。

また、DXを担えるほどの高度な人材はハイキャリアの可能性が高く、ある程度の給与を提示できなければ、採用は難しいでしょう。なお、IPA(情報処理推進機構)によると、DXの実施には、以下の人材が必要と記載されています。

役割 担当範囲
プロデューサー プロジェクトの最高責任者。DXを主導するリーダーの役割を担う
ビジネスデザイナー 企画立案し、プロジェクトに対して裁量を持って貢献
アーキテクト DXに必要なシステムやツールを設計
データサイエンティスト/AIエンジニア AIやデータなど、基幹システムの構築を担う
UXデザイナー ユーザー向けのシステムデザインを担当する約
エンジニア/プログラマ システムやインフラの構築を担当

出典:デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査(情報処理推進機構)

上記はシステムを根本から内製する場合に必要な人材で、既存のシステムやサービスを使う場合はこの限りではありません。企業規模や実施内容が比較的小規模であれば、ベンダー・ツールのサポートセンターを併用しながら進めるのがよいでしょう。

しかし、いずれの場合もコストがかかるため社内で予算の確保や費用の算出を行う必要があるでしょう。

DX化推進には補助金と助成金を活用しよう

ここからはDXで大きな課題となる「コスト」の問題を解決できる補助金や助成金について解説します。まずは2つのお金の意味を把握しましょう。

補助金とは

補助金とは、事業者の取り組みをサポートするために資金の一部を給付する制度です。政府主導で実施されており、支給できる金額と企業には、審査と枠が存在します。そのため、申請すれば必ずもらえるとは限りません。公募は年間で何度か実施されるため、審査にとおるまで申請するケースが多くあります。

助成金とは

助成金とは、国や地方公共団体から支援金が支給される制度です。補助金と仕組みはほとんど同じですが、助成金は審査通過枠数に上限がありません。必要な要件を満たせば受給できるため、補助金より難易度は低いといえるでしょう。

活用できる主な補助金・助成金を紹介

ここからは、DX推進をサポートする補助金・助成金制度をご紹介します。いずれの制度も高頻度で公募を実施しているため、選考に合格すれば比較的早い段階から支援を受けられるでしょう。

ものづくり補助金

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)は、中小企業・小規模事業者が、国の制度変更や経済情勢に対応するため、サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する制度です。

公募の実施時期は毎回異なるものの、およそ34カ月の頻度で開催されています。

基本要件は以下のとおりです。

  • 事業計画期間において、給与支給総額を年平均成長率1.5%以上※増加させること
  • 事業計画期間において、事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金)を、毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準とすること
  • 事業者全体の付加価値額(営業利益、人件費、減価償却費を足したもの)を年平均成長率3%以上増加させること
  • 申請時点で、申請要件を満たす賃金引上げ計画を策定していること

また、以下に公募枠・補助率・補助上限額をまとめました。

公募枠 補助率 補助上限額
省力化(オーダーメイド) 中小企業:1/2
小規模・再生事業者:2/3
750万円〜8,000万円(補助金額1,500万円まで)は1/2もしくは2/3、1,500万円を超える部分は1/3)
製品・サービス高付加価値化 中小企業:1/2
小規模・再生事業者:2/3
750万円〜2,500万円
グローバル 中小企業:1/2
小規模:2/3
3,000万円

なお、親会社と子会社は同一法人とみなし、いずれか1社のみでの申請しか認められません。また、国の他の助成制度との重複は補助対象外です。

IT導入補助金

IT導入補助金とはITツール導入を支援するための補助金です。毎年12カ月ペースで開催されており、要件はそれぞれの枠に必要なツール・ハードウェアを導入することとされています。以下に公募枠・補助率・補助上限額をまとめました。

公募枠 補助率 補助上限額
通常枠 1/2以内 1プロセス以上
5万円以上150万円未満
4プロセス以上
150万円以上450万円以下
インボイス枠
(インボイス対応類型)
4/5、3/4、2/3以内(ソフト導入費)
1/2以内(PC・ハードウェア導入費)
50万円以下または50万円超〜350万円以下(ソフト導入費)
10万円以下または20万円以下(PC・ハードウェア導入費)
インボイス枠
(電子取引類型)
中小企業・小規模事業者等2/3以内
その他事業者等1/2以内
~350万円以下
セキュリティ対策推進枠 1/2以内 5万円以上100万円以下
複数社連携IT導入枠 1/2〜4/5 グループ構成員数×10万円〜350万円以内(上限は3,000万円)

IT導入補助金は補助対象が幅広く、DXの実施内容に適合しやすい点がメリットです。

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、中小企業等の事業再構築を支援する補助金制度です。年間におよそ3回公募が実施されます。要件は以下のとおりです。

  • 事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けること
  • 事業者自身で事業再構築指針に沿った事業計画を作成し、認定経営革新等支援機関の確認を受けること
  • 補助金額が3,000万円を超える案件は金融機関(銀行、信金、ファンド等)の確認も受けること
  • 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0~5.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0~5.0%以上増加させること

以下に公募枠・補助率・補助上限額をまとめました。

公募枠 補助率 補助上限額
最低賃金枠 3/4 最大1,500万円
補助額物価高騰対策・回復再生応援枠 2/3〜3/4 最大3,000万円
産業構造転換枠 2/3 最大7,000万円
成長枠 1/2〜2/3 最大7,000万円
グリーン成長枠 1/2〜2/3 最大8,000万円または1億円
サプライチェーン強靱化枠 1/2 最大5億円

事業再構築補助金は、ほかの補助金制度に比べ事業そのものにフォーカスされています。そのため、補助上限額も1,000万円規模のものばかりです。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進や処遇改善を支援するための助成金制度です。こちらは補助金ではなく助成金にあたるため、要件を満たせば審査を受けず支給可能です。要件は各コースによって異なりますが、共通して「キャリアアップ計画」の提出が必要です。

コースは以下の5種類が存在し、それぞれ数万円〜数十万円の助成を受けられます。

  • 正社員コース
  • 障害者正社員化コース
  • 賃金規定等改定コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 賞与・退職金制度導入コース
  • 社会保険適用時処遇改善コース

なお、支給対象の従業員数には限りがあるため人材の厳選が求められるでしょう。

補助金・助成金申請の要点

ここからは、補助金・助成金の申請を円滑に進めるためのポイントを解説します。申請は定められたフォーマットに従い、漏れがないよう記載しましょう。

申請が難しい場合は有識者に依頼する

申請の要項確認や手続きを自社で行う場合、記入が難しく悩みます。とくに、総務や経理部門への負担が予想されるため、リソースが足りない場合は行政書士や申請代理サービスを利用しましょう。費用はかかるものの、書類の提出までをスムーズに進められます。

支給は後払いが多い

補助金や助成金は後払いが基本です。申請内容が受理されたあとに受け取るしくみのため、一旦は自己資金でかかる費用を負担する必要があります。資金難や内部留保の不足で一時的な負担ができない場合は、資金繰りに無理のない範囲で金融機関から融資を受けましょう。

取組内容は齟齬がないようにチェック

取組内容が要項に見合わない場合、申請が受理されず補助金を受け取れない可能性があります。補助金や助成金ありきで計画を策定すると、万が一支援が行われなかったときにDXプロジェクト自体が頓挫するかもしれません。各制度の要件を満たしているか改めて確認したうえで、申請しましょう。

まとめ

DXには多額の費用がかかります。しかし、補助金や助成金制度を使えば、一部のコストを実質的に1/2以上削減が可能です。申請には要件を満たす必要があり、一旦は自社でコストを賄わなければなりません。手続きには労力がかかるため、制度を利用するならリソースを配分したうえで進めましょう。

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