【デジタル大好き税理士・戸村涼子presentsペーパーレスから始めよう】変化が激しい時代にどう学べば良いか?

進化が目まぐるしいデジタル化とAI

近年、デジタル化やAIの進化が急速に進んでおり、「ついていけない」と感じている方も多いのではないでしょうか。特にAIに関しては、日々新しい情報が更新され、数ヶ月前の情報がすでに古くなっていることも当たり前です。筆者も、日々デジタル化やAIを試していますが、追いついていくのが大変です。このような変化の著しい時代に、どのように学び、追いついていけばよいのか。今回は、忙しいビジネスパーソンの「学び」に焦点を当ててみたいと思います。

学びが進まない理由

本題に入る前に、興味深い調査があります。「日本のビジネスパーソンは勉強しない」という残念な結果が明らかになったものです。2023年、パーソル総合研究所が全国の男女・正規雇用就業者(年齢20-64歳)6,000人を対象に実施した調査では、「ビジネスパーソン全体の56.1%が業務外の学習時間がない」という結果が出ました。半分以上の方が会社以外の場所で学んでいないことになります。

さらに、業務外で学習している人の中で、最も多い学習方法は「Webページを読む」16.6%、次に「書籍・専門書を読む」16.5%でした。この2つはいわゆる「インプット」(情報の取り込み)の部類に属します。学びにはもう一つ、「アウトプット」(取り込んだ情報を外に向けて発信すること、実際に活用すること)がありますが、それはほぼ行われていないという結果になりました。筆者は、アウトプットなしの学びは本当の学びではないと考えています。インプットした情報を外に向けて活用しなければ意味がありません。したがって、アウトプットを含めた本当の学びをしている人はほぼいないことになります。この結果は、インプット重視の日本の教育の影響も大きいと思います。

もう一つ、この調査で興味深いのは「ラーニングバイアス」です。ラーニングバイアスとは、その名の通り「学びに対する何らかの偏見」を指します。例えば、新人バイアス。これは「学びとは、新人がするものだ」という偏見です。このような考えの上司がいる場合、新人はモチベーションを落としてしまいます。また、学校バイアスというものもあります。「学びは、学校でするものだ」という偏見です。筆者は「学ぼうと思えば今すぐ学べる」と考えていますので、この学校バイアスも非常に根深いものと考えています。学びというと、大金を払って学校に行く、何か素晴らしい経歴の方を呼んで研修をしてもらうといったことを考えがちですが、学びはそんな大げさなことではなく、今目の前にあることからできるものと考えています。例えば、気になることをChatGPTに聞いて実践してみる、キーボードのショートカットを一つ覚える、こういった小さな積み重ねが学びです

そして最後に気になったのが、「学習している人は、学びを隠す傾向がある」という結果です。学習している方の56.2%が、何かを学んでいてもそれを社内で共有せず、隠している(「コソ勉」と言うようです)。理由は、「学んでいることを公開しても反応が悪そうだ」「退職すると思われそうだ」などです。これは、組織にとって非常に大きな損失です。せっかく従業員が学んでいるのに、それを社内で実践して組織としての力をつける機会を逃してしまっているからです。これも「独学」が美徳とされる日本の教育の弊害と思われます。

以上が、日本のビジネスパーソンが「学ばない」背景にある実態です。では、これらを踏まえてどのような学び方があるのか検討していきます。

越境学習のススメ

筆者がお勧めする学習方法は、普段いる場所から少し離れて学びを得る「越境学習」です。越境学習とは、所属する企業や組織の枠を越えて、これまでの環境とは異なる新たな場所や人々との交流を通じて学ぶことを指します。

越境学習の方法として、今所属している組織とは別の場所でアウトプットする機会を増やすことが考えられます。具体的には、部署を横断した勉強グループを作る、外部の実践型の勉強会やセミナー、コミュニティに参加するといったことです。

例えば筆者は組織には属していませんが、特定の分野を学べるコミュニティに参加して学びの機会を得ています。学びを目的とするコミュニティでは、普段自分が接している人とは全く別の属性の方(年齢、性別、職業など)と話す機会があります。その結果、自分(自社)の当たり前が通じないことがあります。デジタル化やAIの活用で言えば「もしかして、自分の組織は非常に遅れているのでは…」ということにも気づきやすいはずです。ときには、恥ずかしい思いをすることもあるでしょう。しかし、この恥ずかしさ(「=アウェイ感」)が非常に大事と考えています。人はどうしても周りの環境に影響を受けます。周りが学ばない人ばかりなら、自分も「まあいいか」となってしまうのは致し方ない部分もあります。著者がこう感じる理由は、一定数の人がデジタル化・AIの進化が著しいにもかかわらず「必要性を感じていない」という理由で学ばないからです。周りが率先して活用していなければ、そもそも何に役立つのかイメージが湧かないのでしょう。このような状況を打破するには、普段とは違う環境に身を置き、自分や会社の状況を客観的に見る越境学習が有効です。

オープンかつ安全な場所で学びを加速

筆者も2024年4月から学びのコミュニティを自ら運営しています。「ひとり仕事を楽しむコミュニティ」という名前です。その名の通り、普段ひとりで仕事をしている人が集まり、コラボし、仕事や学びを楽しむためのコミュニティです。運営して3ヶ月が経とうとしていますが、コミュニティの可能性にワクワクしています。

コミュニティを通じて、「日本のビジネスパーソンの学びが進まない」ことの解決策のひとつに繋がるのではないか、と感じています。その理由のひとつが「オープン」な文化です。コミュニティ内では情報をオープンにしています。「●●(役職)以上の人しか見られない情報」はありません。先ほど学びを阻害する要因としてコソ勉を挙げましたが、コソ勉する理由はその組織に対する信頼がない証拠です。「頑張ったことが称賛されず、自分の功績にならない」不安がある以上、公開しようとしないのは当たり前ですよね。それをなくすためには、組織であれば上の役職の人、コミュニティであれば運営者がみずから情報をオープンにして透明性を上げる必要があると考えています。

もう一つ大事なのは「挑戦する人を応援する文化」です。せっかく学んだことを部署内で披露したのに、「余計なことをするな」と白い目で見られた経験がある方は少なくないのではないでしょうか(筆者もその経験があります)。このような経験で、組織に貢献できる人のモチベーションを潰してしまうことは避けなくてはなりません。どんな意見でも一旦は受け入れられ、たとえ失敗しても挑戦した人が称賛される文化は学びの環境には必要不可欠です。組織であれば、上司が率先して学び、挑戦する必要があります。何を発言しても否定されないことが「心理的安全性が高い」状況は、学びを進める組織には欠かせません。私が運営するコミュニティでも「否定しない」は必ず守ってもらうルールとしています。

コミュニティを運営して感じるのは「教え合う文化」が学びを加速させるということです。メンバーの中には、率先して学びをシェアしてくださる方がいます。このような状態は、組織やコミュニティに非常に良い影響を与えます。「教えることは、二度学ぶこと」という言葉があるように、教えるというアウトプットの効果の高さは、実際にやったことがある人なら分かるはずです。組織やコミュニティで教え合う文化ができれば、学びは自然と広がっていくでしょう。

一人で孤独に学ぶ「独学」は、正解がはっきりしている時代であれば良い方法だったのかもしれません。しかし、現代のように変化が著しく、価値観が多様化した社会でははっきりとした正解はなく、「共に学ぶ」スタイルが最適と考えています。特に、ラーニングバイアスが強い日本の組織にお勧めの方法です。

ぜひ、「学びは、机の前で一人でするもの」という先入観を捨てて、他者を巻き込んで学びにつなげましょう

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