人生100年時代のキャリアデザイン
「人生100年時代」とも言われるとおり、ビジネスパーソンの働き方が変化しつつあります。私は氷河期世代の生まれですが、親世代は「一つの会社を勤め上げて、退職した後は退職金で悠々自適」という考え方が当たり前でした。変化が少ない時代においては、転職する価値はそこまで高くなく、かえってリスクのある時代だったのです。翻って現代はどうでしょうか。一つの会社でずっと働き続ける選択はむしろリスクが高いものとなっています。その理由は、テクノロジーの進化や社会の変化が著しく、一つのスキルだけで一生食べていくのが難しくなったからです。そんな時代には会社がOJTで個人のスキルを上げることは難しく、一人一人がキャリアをデザインする必要があります。
そのキャリアデザインのヒントとなるのが、「加減乗除」の考え方です。加減乗除とは、楽天大学の仲山進也さんがその著書「組織にいながら、自由に働く。」で提唱した考え方で、キャリアの進化を4つのステージに分けて考えるフレームワークです。この考え方は、人生100年時代の個人の働き方を進化させ、より
になります。ぜひ、ご自身に現状に当てはめてください。キャリアには加・減・乗・除の段階がある
「加減乗除」とは、キャリアの階段(ステップ)を表します。加→減→乗→除の順番で進んでいきます。
「加」のステージ
「加」のステージは、「できること」を増やしていくステージです。社会人になりたての方が該当するでしょう。この時期は、「できることを増やす」ことに専念したほうが良いでしょう。というのも、その先のステージは、「全体業務を眺める」スキルが必須となるのですが、仕事を始めて間もない時期というのは、「自分の仕事が全体にどうつながっているのか」を理解できません。「会社の歯車」はよくない意味で使われますが、一旦歯車になることも大事です。目の前にきた仕事をとにかく愚直にこなすことで、初めて全体像を見ることができます。
また、「自分が得意なことは?」「自分が好きなことは?」を自己分析することも大切ですが、「加」のステージではしすぎないほうが良いでしょう。しばらく続けてみて分かる楽しさ、適性もあるはずだからです。
私の場合、税理士の資格をとった時期が「加」の段階でした。お恥ずかしい話ですが、資格は持っていたものの経験が不十分で税理士の仕事の全体像が見えていなかったのです。しかも、自分で営業したことがなく、独立後どういったお客様にアプローチするのかもわかりませんでした。そこで、いただいた仕事はなんでも受けることにしました。非常に大変な時期でしたが、この経験があったからこそ、全体像を理解することができました。
自分ができることが増えていくと、自信がついてきます。しかし、それと同時に「退屈」ゾーンにも入ってきます。この時点で
が、その後のキャリアデザインの鍵となります。意外と、「加」の段階にとどまっている人は多い気がします。十分な知識や経験が身についているのに、同じ仕事をし続けているのです。これはとてももったいないことです。次に意識したいのが、仕事を減らす「減」のステージです。「減」のステージ
「加」を積み重ねてできることが増えてくると、人から頼られることが多くなります。そうすると、時間が圧迫し、あらたな挑戦をする時間がなくなってしまいます。そこで、必要となるのが仕事を減らす「減」のステージです。
では、どのような仕事を減らしていけば良いのでしょうか。それは、「やっていて楽しくない・苦手な仕事」です。このような仕事はモチベーションも下がりますし、効率も悪いので手放すべきです。そしてその手放した時間で、
に充てていけばより自由なキャリアにつながります。「加」の段階である程度の量をこなした人であれば、減らすべき仕事は分かるはずです。やっていてモチベーションが下がる、ミスが多い仕事に注目してみましょう。これらをピックアップして、やめることはできないか、もしくは誰かに任せられないか考えてみましょう。
私の場合、独立2年目以降、「減」ステージを考えざるを得ませんでした。というのも、なんでも仕事を受けていた結果、自分のモチベーションが下がっていたのです。日々仕事はあるけど、時間的にも収入的にも、そして精神的にも満足いかない独立生活になっていました。「なんのために独立したの?」という初心に立ち戻り、思い切って仕事を減らすことにしました。具体的には、自分がやりたくない・苦手だと思っている仕事(単に量をこなす仕事など)を徐々にやめていったのです。自営業のわたしの場合には仕事を減らす=売上を減らすことになるので勇気がいりましたが、
だったのです。「乗」のステージ
仕事を減らした後に見えてくるのは、「自分の強み」です。複数の強みをかけ合わせて自由なキャリアを作っていくのが「乗」のステージです。
例えば、ずっと会社の経理部で仕事をしてきた人を考えましょう。入社直後は、伝票処理など簡単な仕事が多いですが、中堅レベルになれば会社全体の数値も理解できるようになっているはずです。ここで大事なのが、「その会社の数字のスペシャリスト」だけで終わらせずに、横展開をしていく発想です。具体的には、自分が積み上げてきたスキル以外の強みをかけ合わせて活用していく方法です。このときヒントになるのが、「子どもの頃から、自然とできてしまっていること」です。目に見える学歴とか資格ではないので、すぐには思いつかないかもしれません。そこで、内省する、他者と話して発見する方法が効果的です。例えば、「その場を和ませる」なども立派なスキルです。このような「自然とできてしまっていること」と、自分の本業を組み合わせるのです。すると、先程の例で言えばずっと培ってきた経理の知識+その場を和ませるスキルを組み合わせて、社内外で経理勉強会を開くことができるかもしれません。この発想だけでとても自由なキャリアデザインができますよね。
私の場合、税理士=税金のプロというわかりやすい強みがあるのですが、それだけにこだわってしまうと自由なキャリアを描けないと感じました。そこで、子どもの頃から誰に言われなくても楽しんでできていることを掘り出していきました。そのひとつが、このコラムとも関係する「デジタル領域」だったのです。小学生のときに買ってもらったパソコンをずっと触る、大学生のときに楽しんで自分のホームページを自作するなど、自然とデジタルに触れることができていました。勤務時代は全然生かせていなかったし、
のですが、独立後、税理士×デジタルを組み合わせることによってセミナー講師や執筆など、これまでにない仕事をいただくことができました。「除」のステージ
「乗」の段階まで来ると、自分の好きなこと・得意なことができるのですがまた新たに「時間不足」の問題が出てきます。気付かないうちに、やっつけ仕事になっている場合もあるでしょう。そこで、また「減らす」必要がでてきます。それが、「除」のステージです。
先程の「減」と違うのは、単に仕事を減らすということではなく「
」を目指す点です。「組織にいながら、自由に働く。」の著者の仲山さんは、複業(パラレルワーク)はこの「除」の状態ではないと書かれています。複業は平行(パラレル)なので、「加」を組み合わせている状態。そうではなく、複数の強みのプロジェクトを統合して、全体をシンプルにしていくことが「除」の状態としています。なかなかイメージが難しいのですが、私はこの「除」のステージでは究極的には「これは仕事」「これはプライベート」と区分しない状態と考えています。この状態になるためには、自分がやるべきことをメタ的に捉えるスキルが必要です。
例えば私の場合、最近はじめた「コミュニティ運営」が「除」のステージと関連あるかもしれません。コミュニティ運営は、少なくともお金儲けが目的ではありません。私が常々考えていた「分断が激しい時代、それを乗り越えた対話をし、学ぶ場所が必要ではないか」という大きな問いに突き動かされて始めたものです。こういった大きな「問い」は、自分がメインでしている税理士業にも通用します。いくらデジタルやAIで便利な世の中になっても、良い対話ができなければ良い仕事はできません。
。だから、「これは仕事」「これは遊び」と割り切っていない。そんな状態が「除」の状態と考えています。「遊ぶように働く」を目指そう
ここまで読んできて、皆さんは今どのステップなのか想像できましたか?最終的な「除」の状態は、「遊ぶように働く」状態とも言えるでしょう。誰かから指示されたことではなく、自分の内なる声に従って動き、「仕事か遊びか」と割り切れるものでもない状態です。私もそんな働き方を目指しています。ひとつ言えるのは、「遊ぶように働く」ことは、どんな人でも決して無茶な話ではないということです。
なにより、目指すプロセスそのものが楽しいです。。皆さんの今後のキャリアの参考になっていたら嬉しいです。
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